銀行員にとって、資格取得は自分自身のキャリアを向上させる重要な手段のひとつです。資格を取得することで専門知識を深め、業務の幅を広げることができるほか、昇進や転職の際にも有利に働きます。
本記事では「銀行員に必要な資格」「銀行員のキャリアを有利にする資格」「その他の有益な資格」について詳しく解説し、それぞれの資格がどのように役立つかを解説します。
銀行員に必要な資格
はじめに、銀行員に必要あるいは必須と言われている資格についてまとめて見ていきましょう。
ファイナンシャル・プランナー(FP)
FP(ファイナンシャル・プランナー)資格は、金融商品の販売や資産運用のアドバイスを行う上で必要な知識を身に付けられる資格です。
教義のFP資格は、日本FP協会・きんざいが主催している国家資格「ファイナンシャル・プランニング技能士」(FP技能士)を指します。
広義のFP資格は、先述のFP技能士に加えて、AFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー)、CFP(サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー)など複数の資格を含みます。
FP資格を取得すると、銀行での資産運用アドバイザーとして、顧客に対して資産管理や投資のアドバイスを行う際に役立つでしょう。
顧客からの信頼を得やすくなり、営業成績の向上に繋がる、昇進や異動の際にも有利、といったメリットがあります。
- 2級FP技能士
- 国家資格であり、中級レベルのFPの知識を証明できます。受験資格は3級FP技能検定合格者、実務経験者、指定の教育課程を修了した者などです。
- AFP
- 日本FP協会が認定する資格で、FPとしての基礎知識と提案書作成スキルを証明できます。AFPとして認定を受けるには、一定の通信講座等の課程修了が必要です。
- CFP
- AFPの上位資格で、国際的に認知されています。高度な専門知識と倫理観が求められるため、CFP認定者になるためには、CFP資格審査の合格のほかに実務経験(またはそれに相当する研修)が必要です。
証券外務員資格
証券外務員資格は、銀行や証券会社等で金融取引業務(金融商品の販売等)を行うために必要な資格です。証券外務員には一種・二種の区分があり、扱える金融商品の種類が異なります。
証券外務員の資格がなければ金融商品の勧誘をすることができないため、金融業界でのキャリア形成を目指す者にとっては必須の資格であると言えます。
二種証券外務員に留まらず一種証券外務員を取得することで担当できる業務の幅が広がり、昇進・転職にも良い影響を及ぼします。
- 証券外務員二種
- 投資信託や債券など、比較的リスクの低い金融商品の取り扱いに従事できます。基礎的な金融知識が問われます。
- 証券外務員一種
- 信用取引やデリバティブなど、リスクの高い金融商品を含めたほぼ全ての金融商品の取り扱いが可能です。受験に際し二種証券外務員の資格は不要で、誰でも受験できます。
宅地建物取引士(宅建)
宅地建物取引士(宅建)資格は、不動産取引に関する知識を証明する資格です。銀行では不動産関連業務を担当する場合に役立ちます。
たとえば不動産担保ローンの審査や不動産投資に関するアドバイスを行う際、宅建資格を得る過程で得た知識を活かせば高度な判断・取引が可能になります。また、不動産取引に関する専門知識を持つことで顧客からの信頼を得やすくなります。
- 宅建試験
- 国家資格であり、法律や不動産取引に関する広範な知識が問われます。受験資格は特にありませんが、難易度が高いため最低でも半年、できれば1年程度かけた十分な準備が必要です。
銀行員に有利な資格
次に、銀行員としての業務を円滑にしたり、就職・転職に有利とされている資格を見ていきましょう。
中小企業診断士
中小企業診断士資格は、中小企業の経営診断や経営コンサルティングを行うための専門知識を証明する資格です。
銀行においては、中小企業向けの融資の可否判断や経営改善のアドバイスを行う際に役立つでしょう。
銀行員が中小企業診断士の資格を持っていれば、企業の経営者等に専門的なアドバイスを提供できます。結果として顧客満足度が向上し、中小企業との取引を拡大しやすくなります。
- 一次試験
- 経済学、経営学、財務会計、法務など幅広い分野から出題されます。マークシート形式で行われ、総点数の60%以上を得点すれば合格です。ただし1科目でも40%未満があれば不合格になります。
- 二次試験
- 筆記試験と口述試験で構成されており、事例を基にした出題に対し文章で解答する形式が採られています。実務的な知識と応用力が問われます。
税理士・公認会計士
税理士・公認会計士資格は、税務や会計の専門知識を証明する資格です。
銀行においては、 企業分析や財務諸表の読み解き、企業経営者から財務関連の助言を求められたときに役立ちます。特に法人向け融資の審査やコンサルティング業務においてこの資格の取得者が重宝されます。
税務・会計の高度な知識を証明できるこれらの資格があれば、顧客からの高い信頼を獲得でき、必然的にキャリアアップの機会を得やすくなります。
- 税理士試験
- 簿記論・財務諸表論のほか、各種の税法科目から3科目を選択して受験し、合計で5科目の試験に合格しなければなりません。なお、税法科目の受験資格には学歴の要件があるため注意が必要です。
- 公認会計士試験
- 短答式試験と論文式試験から構成される試験で、会計監査を行うための高度な知識が問われます。受験資格はなく、誰でも受験可能です。
生命保険募集人資格
生命保険募集人資格は、生命保険商品の販売を行うために必要な資格です。銀行の窓口では生命保険を取り扱っていることが多く、入行後は速やかに取得することが求められます。
生命保険募集人資格の取得後は、顧客のライフプランに応じた保険の提案を行います。営業成績をアピールできれば、銀行員としてのキャリアを高めることにつながります。
- 一般課程試験
- 一般課程は保険商品の基礎知識を学ぶための課程です。試験に合格することで、生命保険商品の基本的な販売が可能になります。
- 専門課程試験
- 専門課程はより高度な知識を必要とする保険商品を取り扱うための課程です。試験合格後はライフ・コンサルタントの称号が与えられます。
- 応用課程試験
- 応用課程は応用力・実践力を備えた募集人を養成するための課程です。試験合格後はシニア・ライフ・コンサルタントの称号が与えられます。
その他有益な資格
最後に銀行で取得が推奨されることが多い資格について見ていきましょう。
金融コンプライアンス・オフィサー
金融コンプライアンス・オフィサー資格は、金融機関のコンプライアンス業務に必要な知識を証明する資格です。
この資格は銀行内の法令遵守やリスク管理業務を担当する際に役立ちます。資格取得を通じて得た知識をもとに、内部監査やコンプライアンス研修の企画・運営を行うことができます。
金融コンプライアンス・オフィサー資格の取得により、勤務している銀行のコンプライアンス意識向上に貢献し、企業としての信頼性を高めることができるでしょう。
参考【日本コンプライアンス・オフィサー協会】試験案内・種目一覧
マネーロンダリング防止資格
マネーロンダリング防止資格は、マネーロンダリングに対する知識を持つことを証明する資格です。AML/CFT(アンチマネロン)認定試験が実施されており、学習の課程で国際的な基準に基づくマネーロンダリング防止とテロ資金対策の知識を習得できます。
マネーロンダリング防止資格は銀行のリスク管理部門や内部監査部門で、マネーロンダリング防止策を策定・実施する際に役立ちます。この資格を有することで、 リスク管理能力が向上し、金融犯罪防止の専門家として認識されるでしょう。
参考【きんざい】種目別ガイド:AML/CFTスタンダードコース
証券アナリスト関連資格(CMA、CFA、CIIA)
証券アナリスト関連資格は、証券分析に必要な高度な知識を証明する資格です。代表的なものに次の3つがあります。
- CMA(証券アナリスト、Certified Member Analyst of the Securities Analysts Association of Japa)
- CFA(米国証券アナリスト、Certified Financial Analyst)
- CIIA(国際公認投資アナリスト、Certified International Investment Analyst)
証券アナリスト関連資格は、トレーディングや投資関連業務に従事する際に役立ちます。これらの資格を有していれば、ポートフォリオ管理や投資分析の専門家として活躍できるでしょう。
特にCFAとCIIAは国際的な認知度が高いことから、グローバルなキャリア展開につなげることもできます。
参考【日本証券アナリスト協会】国際公認投資アナリスト(CIIA)
この記事のまとめ
銀行員にとって、資格取得はキャリアアップや業務の幅を広げるための重要な手段の1つです。必要な資格や有利な資格を取得することで、専門知識を深め、顧客からの信頼を得ることができます。昇進や異動の際にも有利に働くことでしょう。
あなた自身のキャリアを豊かにするために、継続的な学習と自己啓発を行い、積極的に資格を取得してください。資格取得は自己成長の一環であり、常に新しい挑戦を続けることで、銀行員としての価値を高めることができます。
資格は知識やスキルの証明である以上に、自己成長とキャリアの礎となるものです。常に新しい知識とスキルを身につけ、金融業界での成功を目指していただければと思います。